2020年10月20日(火)(憲法千話)
憲法便り#3737:10月20日発売の、菅義偉著『政治家の覚悟』のあるまじき改ざん、二枚舌を糾弾する!
同書は、2012年3月に文藝春秋企画出版部が刊行した『政治家の覚悟:官僚を動かせ』を改訂した新書版である。
検証するために、高田馬場の書店で1冊購入してきた。
同書には、表紙にも、奥付にも、副題の「官僚を動かせ」はなく、改訂版であることも記されていない。
念のため、国立国会図書館及び、全国の大学図書館の所蔵状況を調べてみた。
大学図書館の所蔵状況は、《cinii》という検束システムに拠った。
国立国会図書館の蔵書
政治家の覚悟 : 官僚を動かせ
図書 菅義偉 著. 文藝春秋企画出版部, 2012.3 <A11-Z-J329>
Ciniiで検索した結果、所蔵が判明したのは、江戸川大学総合情報図書館、国際基督教大学図書館、札幌学院大学図書館、政策研究大学院大学大学、東洋大学付属図書館、北京日本学研究センター図書資料館、目白大学新宿図書館の7館である。
原著を調べてみたいと思ったが、新型コロナウイルス感染の恐れがあり、図書館の利用は大きく制限されてしまっていることがわかった。
目白大学図書館は、わが家から歩いて行けるところにあるので電話をかけて聴いてみたが、「従来は学外の方でも利用できましたが、現在は、学生のみの利用としている」とのことであった。
次に国立国会図書館に電話で問い合わせをしてみたところ、次のような厳しい条件下にあった。
同館の「利用者サービス部 サービス規格課 抽選予約担当宛てに、ハガキかインターネットで申し込むこと。申し込みに必要な事項は、名前(ふりがなつき)、住所、利用者カードのIDナンバー、閲覧希望日、電話番号。
とういう訳で、気長に抽選に当たるのを待つしかない。外れたら、また申し込む。
したがって、とりあえず、以下の『毎日新聞』の以下の記事を利用させていただくこととした。
2020年10月20日(火)付『毎日新聞』夕刊9面に、大場伸也氏による、10月20日発売の新書に対する明快な批判記事が掲載されていた。重要な問題なので、その全文を引用させていただくことにした。この記事には、新藤宗幸・千葉大名誉教授(行政学)による、「ご都合主義の方だ」と題する批判的談話も併せて掲載されているので、ご覧いただきたい。
「記録残すの当然」削除「政治家の覚悟」首相新書 森友や桜 公文書改ざん、廃棄で?
菅義偉首相が野党時代の2012年3月に刊行した単行本「政治家の覚悟」(文芸春秋)を改訂した新書が、20日に発売される。「政府があらゆる記録を克明に残すのは当然」と公文書管理の重要性を訴える記述があった章などを削除。官房長官時代のインタビューを追加している。新書は全244ページ。
菅氏は12年の単行本で、旧民主党政権が東日本大震災時、会議で十分に議事録を残していなかったことを批判し、「千年に一度という大災害に対して政府がどう考え、いかに対応したかを検証し、教訓を得るために、政府があらゆる記録を克明に残すのは当然で、議事録は最も基本的な資料です。その作成を怠ったことは国民への背信行為」などと断じていた。
だが、菅氏がその後、官房長官を務めた安倍晋三政権では、学校法人「森友学園」への国有地売却問題や首相主催の「桜を見る会」問題を巡り、政権に都合の悪い公文書や記録が改ざんされたり、廃棄されたりした。新型コロナウイルス対策を話し合う会議も、発言者や発言内容の詳細が分かる議事録を残しておらず、政権の中枢にいた菅氏は批判を受けていた。【大場伸也】