2017年1月7日(土)
憲法便り#1902:年頭20話(その14)高橋まつりさん(24歳)を過労自殺に追い込んだ、電通「鬼十則」の世界を考える。
2016年12月29日付『東京新聞』朝刊一面を借用
高橋まつりさんが過労自殺に追い込まれたことは、非常に悲しく、痛ましい。
私たちの年代からすれば、彼女は、孫の世代にあたる。
若い、有能な女性が亡くなったことだから、軽々に論じることは出来ない。
しかしながら、このような悲しいことが繰り返されないよう願って、私の意見を率直に述べておきたい。
私がこの報に接したとき、最初に考えたのは、「労働組合は、何をしていたのだろうか?」ということであった。
実は、早稲田大学第二文学部に通っていた頃に、電通労組の組合事務所でのアルバイトの仕事を紹介されたことがあるからだ。
その頃は、日韓条約反対の集会やデモ行進が頻繁に行われていた時代であった。
労働条件は良かったが、夕方からの行動があるときには、私自身も参加しなければならないということなので、残念ながら、断ることにした。
そのような記憶があるので、電通にはそれなりに、筋を通して頑張っている労働組合があるのではないかと、漠然と考えていた。
私が働いていたナウカには、ナウカ労組があり、出版労連に加盟していた。
その出版労連は、日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)を構成する一員である。
MICは、新聞、印刷、放送、出版、映画、広告、音楽、ITの各労組から構成されている。
だが、電通の労働組合の状況がどうなっているのかは、インターネットで調べてみても、分からなかった。
ここで、インターネットで調べた「鬼十訓」とはどのようなものかを転用しておきたい。
下記の「鬼十訓」で象徴的なのは、第5訓の「殺されても話すな!」である。
「兵隊さんは死んでもラッパを離さなかった」という日清戦争時の逸話が思い起こされる。
その他の項目は、一つ一つを切り離して読んでいると、「オレもこれに似た考えというか、気概を持って働いている」という人も出てくるものと思う。
しかしながら、社員手帳にこれが印刷され、経営者を先頭にこの考え方に沿って仕事をしている場合には、巨大な強制力が生じる。
新入社員が抵抗できる余地はない。
12月28日の記者会見で、電通の石井社長は、「高橋さんの過労自殺があって、時代に合わない表現があったと認識するに至った」と語っている。逆に言えば、それまでは、問題を感じていなかったことになる。社内競争を勝ち抜いて社長の座に登りつめた彼にとっては、むしろ当然のことだったのだろう。
彼は、謝罪と、一月の取締役会での引責辞任を表明したが、態度は傲慢であった。
記者からの、「今日初めての会見だが、遅かったという認識は」との質問に対して、
石井社長は、たった一言「ない」と答えた。
誰が後継社長となったとしても、同じ感覚で電通の経営に携わってきた人物に、根本的な変革が図れるかどうかは、疑わしい。
社会からの厳しい目が、改革の力になることを願うものである。
そうしないと、高橋まつりさんは、浮かばれない。
- 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
- 仕事とは先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
- 大きな仕事と取組め! 小さな仕事は己を小さくする。
- 難しい仕事を狙え! そして成し遂げるところに進歩がある。
- 取組んだら放すな! 殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...
- 周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。
- 計画を持て! 長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
- 自信を持て! 自信が無いから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない。
- 頭は常に全回転、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ!! サービスとはそのようなものだ。
- 摩擦を怖れるな! 摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。