2021年6月3日(木)(憲法千話)
憲法便り#5104:「日本輸送サービス労働組合連合会第4回定期大会へのメッセージ」を、6月19日の大会に先がけて紹介します!
月並みなメッセージではなく、わたしなりのメッセージを考えました。
推敲を重ね、20回ほど書きなおしました。
このメッセージを書くために、名古屋の古書店から『鉄路の斗い」のパンフレット1冊、神田神保町の古書店から『鉄道員』のパンフレット2冊を至急便で購入して、文章の正確を期しました。
組合員の皆さんからどのような反応があるかを、楽しみにしています。
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日本輸送サービス労働組合連合会第4回定期大会へのメッセージ
第4回定期大会おめでとうございます。心からの連帯の挨拶を送ります。
この大会は、日本輸送サービス労働組合連合会が、これまでの身内意識から脱却し、文字通り単産の機能と役割を高める歴史的な大会になることと思います。
また、他産業の労働組合、経営者の皆さんの注目を集めることと信じております。
私が、3月20日にいわき市で開催されたオンラインシンポジウムの報告書を読んで、強く感じたのは、公共交通の安全・安心とは何かという問題です。
最近、「人身事故」と表現されている自殺が、連日のように報じられています。私鉄も含め、路線や駅名が決っています。したがって、この問題は、ホームへの人員配置の増加により防げる場合もあると考えています。
最近、どの企業も、収入減を人員削減により乗り切ろうとしています。しかし、これは、安全輸送の基本から外れ、本来あるべき企業運営の在り方から、かけ離れています。
つい先ごろ報道された、新幹線運転士が腹痛で離席した問題も、運転資格を持つ車掌が同乗していれば、防げた問題だと考えます。運転士は生身の人間です。
したがって、これは、運転士個人の問題というよりも、JRの企業としての安全政策の問題と考えます。このような問題の立て方を「理想論」と片付けてしまうのか、それとも企業に検討を求めるのか。これは、労働組合の存在意義が問われる問題と考えます。そして、さらに、組合員ではない職場の仲間、そして利用者の信頼感を勝ちうるか否かが懸ってくる「根源的」な問題と思います。
それからもう一つ、人身事故が運転士に与える精神的、心理的、肉体的影響も心配しています。万が一「不幸な事態」に遭遇してしまった場合の、運転士に対する精神的、心理的、肉体的ケア―が必要です。これは、所属組織の枠を超えて、全ての運転士に行われるべきもので、その要求を出来るのが、日本輸送サービス労働組合連合会だと思います。
また、コロナ禍の下で、本当は生きたいと思いながら死を選んでしまう人たちが出ないような社会を目指す闘いも必要だと思います。
ところで、皆さんに紹介したい、鉄道労働者の闘いを描いた作品があります。
第一は、ミャンマーのポスターです。
ミャンマーでは今、鉄道職員たちが軍政への抗議のために、命がけで闘っています。
機関車の両側に付いている太い両腕を鎖で縛り、電車の運行をストップする意思表示をしているポスターがあります。軍政への不服従運動(CDM)に参加することで、ミャンマーの国家を「自由と民主主義」という正しい目的地に向かわせようとしている様子を描いた作品です。
ふたつ目は、1945年に公開されたフランス映画「鉄路の闘い」です。
これは、製作・フランス映画総同盟、後援・フランス国鉄「鉄」抵抗委員会、ルネ・クレマン監督による、ドイツ軍占領下のフランスでのレジスタンス活動を描いたセミ・ドキュメンタリー作品です。
三つ目は、イタリア映画「鉄道員」。
これは、青年の飛び込み自殺によって、人生の歯車が狂ってしまった、誇り高い「鉄道員」の愛と苦悩を描いた作品です。『憲法便り』に掲載するために、「ものがたり」の全文を入力していて、主人公の姿と、私が存じ上げている関昭生委員長をはじめ貴労組の組合員の皆さんの姿が重なって、涙と笑いが交錯しました。
【ものがたり】の冒頭には、次のように書かれています。
「50才のクリスマスを迎えたイタリアの鉄道機関士、アンドレア・マルコッチは、末っ子のサンドロから英雄のように慕われていた。というのは、父親は銀モールに輝く制帽をかぶり、最新式の電気機関車を運転し、誰よりもたくさん酒を飲み、誰よりも巧みにギターをひくことが出来るからである。」
彼は、家族の愛、親友と、仲間と、隣人たちの支えにより誇りを取り戻し、幸せな人生を終えます。
私は、貴労組に、これらの映画の上映会をはじめ、演劇、音楽、芸術作品などに幅の広い活動を目指していただきたいと思います。文化は、人びとの心をつなぎます。
仲間と酒を酌み交わすことをこよなく愛する皆さんが、組合活動でも、仕事でも、日常生活でも、充実した人生が送れるよう心から願って、連帯の挨拶とします。
2021年6月3日
憲法研究者 岩田行雄