2022年4月6日(水)(憲法千話)
憲法便り6250:ジャーナリスト・沢木啓三氏の「メディアをよむ」;「ヤジ判決報道と地元との落差」の全文を紹介します!
2022年4月3日(日)付『しんぶん赤旗』日曜版第35面を引用しました。
2019年、札幌市で選挙の応援演説中の安倍晋三首相(当時)にヤジを飛ばした男女が、北海道警の警察官に排除されました。その2人が道に損害賠償を求めた訴訟で、3月25日、札幌地裁が原告勝利の判決を言い渡しました。広瀬孝裁判長は「内容や様態が場にそぐわないと判断し、表現そのものを制限した」と、踏み込んだ判断で警察による「表現の自由」の侵害を認めました。
まさに画期的な判決ですが、東京のテレビを見る限り、ほとんど扱っていませんでした。ロシアの言論弾圧を批判的に特集し、「表現の自由」の大切さをキャスターが訴えていたNHK「ニュースウオッチ9」もこの日の札幌地裁判決については報じていません。
一方、地元メディアは手厚く報道しました。北海道新聞は関連記事で「現場の対応も、その後の説明も、もっと丁寧にできなかったかと悔まれる」と道警の警察官が語っていたことなどを紹介。26日付の社説は「道警の排除行為は、政治と国民のコミュニケーションの阻害だった」と厳しく批判しました。
圧巻だったのは、北海道放送(HBC)のニュースワイド番組「今日ドキッ!」(25日放送)。ニュースを深堀りするコーナー「ほうひとホリ」で約9分もの特集を組みました。
特集の中では、警察官に排除された2人のその後に密着。事件当時大学生だった桃井希生さんはその後、地域の労働組合に就職して、外国人労働者の問題などに取り組んでいます。桃井さんは「声を上げる権利を保障するのが、人が尊厳を持って生きるのに必要だ」と、今回の判決の意義を語っていました。
HBCはこの問題を徹底的に取材して「ヤジと民主主義」という優れたドキュメンタリー番組も放送しています。ローカル放送局の奮闘に、心から敬意を表します。
(さわき・けいぞう=ジャーナリスト)