ロシア人の反戦「トルコにて」(上)
トルコには、ロシアで反戦を訴え当局の弾圧逃れた人たちがいます。自分の国によるウクライナ侵略に悔恨や苦悩を抱きながら、「プーチンは戦争をやめよ」とウクライナの人々と訴えています。(イスタンブール=秋山豊記者、写真も)
モスクワ出身のアレクサンドル・キムさん(40歳)は、ロシア国内の人権団体で活動していました。2月24日、ロシアのウクライナ侵略が始まると、戦争に反対する意見をブログに書いて投稿しました。
その後、ロシア当局が偽情報を広めたと見なした者に最長で15年の禁固刑を課す法律が成立しました。キムさんは自分も逮捕は免れないと考えてロシアを去ることを決意、イスタンブールに逃れてきました。
【旗揚げ国歌を歌い】(中見出し)
キムさんはイスタンブールで、ウクライナ難民が行っているロシアへの抗議デモに参加しています。ロシアの反戦を象徴する白地に青いストライプの旗を掲げ、難民と一緒にウクライナ国歌を歌い、ロシア軍に殺害されたウクライナ国民を追悼し、プーチン大統領への抗議の意思を示しています。
「私は優しいウクライナ人にたくさん出会ってきました」
キムさんは同国首都キーウを訪ねた時の思い出をうれしそうに話してくれました。
地下鉄で出会った女性が、見ず知らずのキムさんに「これは便利ですよ」と言って電車の乗車カードをくれたと言います。
ここまで話すとキムさんは突然、両手で顔を覆い、おえつを漏らしました。
「この瞬間にも彼女のような人びとがロシア軍の爆撃から必死に逃げているかも知れません。私はロシア国民であり、政府に税金も払ってきました。私の手は血で染まってしまいました」
【友人と共同生活】(中見出し)
キムさんが暮らしているアパートに案内してもらいました。ロシアでプーチン政権に抗議し、投獄の危険を逃れてきた人びとを支援するグループが提供したアパートです。
中に入ると寝室は六つあり、ロシア人約10人が共同生活をしています。
キムさんはいいます。「ここには反戦をともに訴える友人もいます。ロシアはウクライナを破壊し、戦争犯罪を続けています。それでも、イスタンブールにいるウクライナの人びとは私を受け入れてくれました。私にはウクライナの人びとを支持し、反戦を訴える責任があります」
トルコの地元紙は3月21日付で、ロシアの侵略開始以降、約1万4000人のロシア人がトルコに逃れてきたと報じています。