2022年5月12日(木)(憲法千話)
憲法便り#6553:回り始めた戦争の歯車を止めることが出来るのか?青年劇場公演「眞理の勇気―戸坂潤と唯物論研究会」;主演の清原達之さんの談話を紹介します!(記事全文付き)
2022年5月10日(火)付『しんぶん赤旗』日刊紙第10面を引用しました。
回り始めた戦争の歯車 止めることが出来るのか
青年劇場公演「眞理の勇気―戸坂潤と唯物論研究会」主演清原達之さん
治安維持法によって投獄され、日本の敗戦直後に獄死した戸坂潤らの人間像を抱く舞台が今月、上演されます。青年劇場公演「眞理の勇気―戸坂潤と唯物論研究会」(作=古川健、演出=鵜山)です。戸坂を演じる入団28年目の清原達之さんに聞きました。
(寺山忠生)
青年劇場公演「眞理の勇気―戸坂潤と唯物論研究会」
「戸坂潤を率直に言って知りませんでした。『日本イデオロギー論』や『科学方法論』などを手当たり次第読みましたが、ほとんど頭に入ってこなくて、別の『獄中通信』なども含めて何回か読んでいるうちに、おぼろげながら人物像が頭の中にわいてきたような感じです」物語は1945年8月9日、東京の戸坂宅で妻・イクが長野刑務所から獄死の電報を受け取る場面からはじまります。
そして13年前、1932年に時代はさかのぼります。「野蛮で反知性的なファシズムに対し、我々はあくまでも知性を武器にして、あらゆる分野で唯物論のものの見方を確立し、体系化していく」と仲間たちと「唯物論研究会」を結成。しかし、特高警察の監視、集会禁止、執筆禁止に追い込まれます。
そして13年前、1932年に時代はさかのぼります。「野蛮で反知性的なファシズムに対し、我々はあくまでも知性を武器にして、あらゆる分野で唯物論のものの見方を確立し、体系化していく」と仲間たちと「唯物論研究会」を結成。しかし、特高警察の監視、集会禁止、執筆禁止に追い込まれます。「権力に対して立ち上がったヒーローとしてではなく、戦争へと向かう全く先が見えない社会の流れの中での苦悩や、人間としての揺らぎもあった中で、ひとつの道を選び取ってゆく人間像を演じたい。いろんなデコボコもあって完全な人でもないんですね。単なる英雄的な評伝にはならないと思います」
ロシアと重なる(中見出し)
戦前の「日本的ファシズム」の流れの中で、「ぎりぎりのところまで唯研の旗を守ろう。…闘いを続けよう」と決意する戸坂。こんなせりふがあります。
(あらゆる動員の中でも、思想の動員は最悪だ。一度、思想動員がなされたら、体制に好ましくないとされた思想は徹底的に排除されるだろう)
戸坂のせりふを語れば語るほど、げんに進行中のロシアによるウクライナへの侵略戦争、日本の現実と重ね合わせざるをえないと言います。
「いま抑圧されているロシアの人々はどんな気持ちだろうと思うんです。勇気をもってデモで声をあげている人たち。プーチンを止めることはできるだろうか。一度歯車が回り始めたら止めることはできないのか。日本でいえば、この前、自民党の安全保障調査会が『敵基地攻撃能力』を『反撃能力』に言い換えましたよね。ゾクッとしました。歯車のスピードが速まっているんじゃないか。いま、止めなければいけない時じゃないかと。いまこの芝居をやる意味があると思うんです」
自分を磨き続け(中見出し)
鵜山さんの演出作品に出演するのは、新国立劇場でのシェークスピア歴史劇シリーズ(2009年「ヘンリー六世」、12年「リチャード三世」、18年「ヘンリー五世」、20年「リチャード二世」以来となります。「自分が思っていることを押し付けることなく導いてくれる演出家です。言語感覚がちょっと不思議なところもあって、役者はいっそう考えさせられます」
劇団の舞台だけでなく、外部の作品にも意欲的に出演し、自分を磨き続けています。
「つねに今の自分を疑っていたい。とどまっているのでなく、日々、改革していきたいですね」
*「眞理の勇気―戸坂潤と唯物論研究会」 5月13日~22日に公演。
東京・紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA
電話:03-3352-7200
唯研(唯物論研究)創立50周年記念 第37回 戸坂忌墓参会(1982.8.9 多摩思想の墓に於て)栗田良平氏撮影
思想の墓地 赤木健介
長崎に原爆が落ちた日
カイセンに苦しみ 戸坂獄中で死ぬ
膝ほどのマツ笛が大きくなり
青い実を着けて戸坂の死後二十一年
夏草につつまれた墓標
松本が倒れて二十年―
誰かがむしる思想の墓地
人は死んでも思想は死なず
どこかで誰かが 灯を伝えゆく
(一九六六年八月)
↓No.26が岩田行雄
拡大写真
①戸坂イクさん(戸坂潤夫人)