2022年5月14日(土)(憲法千話)
憲法便り#6559:平和構築のために私も努力! デビュー作『同志少女よ敵を撃て』が、全国の書店人が選ぶ本屋大賞に輝いた作家・逢坂冬馬(あいさか・とうま)さんの談話を紹介します!
2022年5月15日(日)付『しんぶん赤旗』日曜版第36面を引用しました。
旧ソ連の女性狙撃兵を描いたデビュー作が、全国の書店員が選ぶ本屋大賞に輝きました。しかし胸中は複雑です。
「執筆中はロシアがウクライナを全面侵略をするなど夢にも思いませんでした。この事態と重ねて読まれているこの小説は、望まずして、ある種の運命を背負うことになった。作者の責任として明確な平和のメッセージを発信していきたい」
第2次世界大戦中の独ソ戦が舞台です。主人公のセラフィマは18歳。ドイツ軍に故郷の村を奪われ、一人生き残ります。女性狙撃兵訓練学校に入り、前線へ身を投じます。
「旧ソ連に女性狙撃兵舞台は実在しました。若い女性が多くの人を殺害し、殺され、戦後は白い目で見られました。それぞれに事情があり、徐々に戦争に適応し、最後は心身ともにボロボロになってしまう。そういう現実を書こうと思いました」
性別や出身などによる差別がつきまとう女性たちの苦しみを描き、戦時性暴力への批判も込めています。
「従来の戦争小説はどれも男たちの物語です。今回、たたかう女性を描き、『戦争とジェンダー』を中心テーマにすえました。現代に通じるものになりました」
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小説を書き始めたのは大学卒業後。会社に勤めながら、10年以上、新人賞に応募してきました。「書いている時間が一番楽しくて、苦労だと思っていませんでした」
南米の仮想国家の物語、パラレル世界の空母の戦闘機乗りの話、SFなど「空想度の高い娯楽長編」書いてきました。歴史小説は本作が2本目です。
戦争について深く考えるようになったきっかけは、学生時代、祖父に戦争体験を聞いたことです。
「祖父は海軍に志願し、国内で終戦を迎えました。軍港で空襲をうけ、凄惨(せいさん)な光景も目撃した。簡単に人が死ぬのを見たそうです。戦争から帰ってきたら、それまでの価値観が一変したらしい。文才があって作家志望だったのに、小説を書く気を失っていました」
新潟の巻町(現新潟市)の米農家だった祖父は、戦後は平和主義者で政治活動に取り組みました。
「ゼロ戦のプラモデルは何度ねだっても買ってくれませんでした。巻原発計画には反対派として頑張っていました。原発誘致を否決した住民投票の熱気はよく覚えています」
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受賞スピーチで「絶望することはやめます。戦争に反対し、平和構築のための努力をします」と語ります。
「作家として戦争の惨禍をいろいろな角度から描いています。ロシアの侵略をやめさせるため、ロシアの侵略をやめさせるため、ロシア国内の反戦運動や、拘束された人の支援活動などを、資金援助その周知で応援するつもりです」(北村隆志記者)
【略歴】
あいさか・とうま=1985年埼玉県生まれ。明治学院大学国際学部卒業。
昨年、『同志少女よ、敵を撃て』で第11回アガサ・クリスティー賞を受賞してデビュー。