2022年12月27日(火)(憲法千話)
憲法便り#6841:「欧州左翼との連帯求めて 緒方副委員長に聞く◇1◇“時宜得た訪問”大歓迎」を紹介します!
2022年12月25日(日)付『しんぶん赤旗』日刊紙第1面を引用しました。
11月の欧州訪問と、12月の欧州左翼党大会(オーストリア・ウイーン)に、ともに日本共産党代表団の団長として参加した緒方靖夫副委員長・国際委員会責任者に、どんな活動をして、各党とはどんな話し合いが行われたのかを聞きました。
11月7日から16日まで、フランス、スウェーデン、ドイツ、オランダ、ベルギー、オーストリアの6カ国を訪ね、左翼・進歩政党と会談しました。一行は私と小島良一国際委員会委員、米沢博史国際局員。会談は担当別に2人チームで行い、もう一人は別の活動にあたりました。
9日間で6カ国と超過密な訪問で、苦労は移動でした。搭乗する飛行機が一つでもキャンセルされたら予定が壊れる“ガラス細工の旅”でもあったのですが、予定通り終えることが出来ました。
訪問したのは中立国のオーストリアを除き全て北大西洋条約機構(NATO)加盟か加盟申請国です。会談は」8党と行い、欧州左翼党の議長、そのシンクタンク「トランスフォーム欧州」理事(次期欧州左翼党議長)、オーストリア第2の都市グラーツ市長(共産市政)と会談しました。別筋として、オーストリア外務省の軍縮局長とも会談しました。
私たちは、どこでも“時期といいテーマといい、実にタイミングのいい訪問となっている”と大歓迎されました。
発達した資本主義国ならではの党活動、選挙、宣伝活動でSNSをどう活用しているかなどで話が進み、ウクライナ戦争の分析や見通しなど、世界情勢でも多面的な意見交換ができました。
欧州では、極右の台頭が著しいのですが、日本の侵略戦争美化の動きは驚きを持って受け止められ、逆に、私たちが日本の異常さを再認識する場面もありました。
ジェンダー平等の実践のしかたや、気候変動問題への取り組みは、先進的であり、詳しく活動を聞くこともできました。
”相互理解と学び合い”の精神で、多くのテーマで多面的に意見交換し、今後どう協力を強めるかについて大いに意気投合しました。
互に共通した探究を知り、「なんだ、同じことを考え、やろうとしているのだ」と顔を見合わせることもしばしばでした。互いの試行錯誤、日夜の苦労を知り合うことがいかに有益で必要かを痛感しました。(3面につづく)
1面のつづき
党関係では、以前から関係があったフランス共産党、スウェーデン左翼党、ドイツ左翼党とは関係を活発化しようということになり、初接触の左翼政党「服従しないフランス」とは、関係の確立を確認しました。接触はあったのですが、今回初めて公式に会談したオランダ社会党、ベルギー労働党とは関係確立で合意しました。
さらにオーストリア共産党と友好関係を確認しました。この党は、わが党の第12回大会(1973年)へのメッセージをソ連の圧力でキャンセルした経過があったのです。今回会談した元党議長からは、当時はチェコ事件を批判し、ソ連の介入で指導部が入れ替えられた中で起きたものだったとの説明があり、事情を理解しました。
この党は、翌月の欧州左翼党大会の関係党となり、私と会談した元党議長が欧州左翼党の新議長となりました。活発に交流し、わが党との関係が一挙に進みましたね。
課題の共通点多い
わが党の第28回大会(2020年)で改定した党綱領では「発達した資本主義国での社会主議的変革は、特別の困難性をもつとともに、豊かで壮大な可能性をもった事業である」、「社会主義・共産主義への大道である」との展望を示しました。これは欧州の諸党との国際連帯を示すものでした。
ただ、文書上の研究はしても、新型コロナのため実際の交流は進みませんでした。今回の訪問の契機は、党創立100周年記念講演(9月)での「欧州の左翼・進歩政党との交流と協力の新たな発展」を進めるとの提起でした。
各党との会談では、訪問目的として、正面からこの課題を提起したところ、すべての党から「こちらこそ望むところ」と歓迎されました。どの党も苦労は共通していて打てば響いて話が広がりました。
話し合ったテーマでは、支配層に圧倒的に有利な政治・経済・社会・メディア状況のもとで、選挙を通じて国民の多数を獲得するための戦略とか、格差と貧困を拡大する新自由主義への有効な対案、また、資本主義を乗り越えた未来社会への魅力ある展望をいかに示すかなどでした。
1万キロも距離を隔てる欧州とアジアでは活動条件に違いがあります。でも発達した資本主義諸国で活動する左翼・進歩諸党には、活動方法にも直面する課題にも共通点が実に多い。多数の国民の支持を得て社会変革を進める、発達した資本主義国における左翼政党として困難はあるけれど、大きな可能性のある壮大な事業に取り組んでいるという強い連帯を感じました。
東西で軍拡反対を
欧州と日本での情勢の展開により、今回の訪問はより意義深いものとなりました。
各党との会談で、私たちは次の2点を述べました。
まず、ロシアのウクライナ侵略戦争が続くもとで、国連憲章と国際法に基づく国際秩序の回復と強化、平和のためのたたかいが今ほど重要な時はないこと。
第2次世界大戦後、特にソ連崩壊後、欧州で戦争が起こることはないと信じられてきました。そこで起きた戦争に衝撃が走りました。ロシアの脅威に対して政府提案の軍拡が通りやすい下で、各党は苦労しつつ、力強く反対のたたかいを進めています。
日本では、岸田首相がこの6月に開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に日本の首相として初めて出席し、NATOとの協力強化を約束しました。日本政府は5年以内に国内総生産(GDP)比2%の軍事費達成というNATO基準の目標を設定。米国は、日本に大西洋同盟への一層の関与を促し、NATOにもアジアへの関与強化に圧力をかけている情勢だと指摘しました。
私は、「日本と欧州の支配勢力が軍事・政治経済の支配ネットワークを強化しているときに、日本と欧州の左翼・進歩勢力は、連帯と協力関係をさらに強化することは至上課題だ」と強調しました。
この提起はピッタリはまり、共同強化の強い合意ができました。フランスの2党からは、東アジアでの欧州の軍事プレゼンス強化に反対する共同をしようという具体的な提案がそれぞれ出されました。
“先には先が」ある”
欧州では極右勢力の台頭が顕著です。イタリアでは、極右が議会で多数を占め、首相に選出されたばかりで、その衝撃の余波が感じられました。
会談した諸党は、事態は危機的だが、まだピークではないとの分析で、重要な闘争課題に位置づけられていました。
事情は異なるものの日本では自民党内で、日本の侵略戦争と植民地支配を美化する右翼的な歴史修正主義の流れが強まっています。
ヒトラーとムソリーニと同盟した日本軍国主義を肯定・美化する事態を紹介すると、「信じられない」「なぜ法的に規制しないのか」などの声が上がるほど驚かれました。欧州では多くの国で、ヒトラーやその象徴の宣伝は法律で禁止されているのです。「日本の右翼の主張は、欧州の極右よりもファッショ的ではないか」という指摘もありました。
欧州と日本で、右翼・極右勢力に対抗するために、経験を交流し、共同することが合意となりました。
そうした議論のうえで、私から、次の五つの課題で共同して取り組んではどうかという提案をしました。それは、①国連憲章に基づく戦争反対と平和秩序の擁護②軍事ブロック・軍事同盟反対③核兵器の廃絶と核兵器禁止条約の推進④気候正義⑤ジェンダー平等です。
その際、ロシア、中国を国際社会から排除しようとする動きについて、「覇権主義には厳しく対応・批判するが、包囲するとか、排除の試みには反対であり、包摂する対応が求められる」と述べると、「それは正しい」、「批判するが包摂するは公平な政策だ」という強い賛同の声が出ました。
ジェンダー平等では日本社会の後進性を説明し、党の取り組みや努力とともに「私たちは、認識を高める努力をしているが、性差別、性的偏見を完全に免れてはいないと自覚しており、あなた方の政策や実践に学びたい」と率直に述べました。このテーマでスエーデンの代表は、こちらの求めに応じた発言の最後に「自分たちの取り組みは途上にあり、まだ目標には遠いのだ」と語りました。私は“先には先があるものだ”と印象深く聞いたのでした。(第1回入力作業継続完了)(12月28日午後3時)
*第2回へつづく。
(入力作業継続中)